富裕層インバウンドから考える観光戦略と文化財の保護

写真:©総本山仁和寺

2018年に世界遺産の仁和寺(京都市)が境内の木造2階建て旧家屋「松林庵」を高級宿坊に改築した。延床面積は約160平方メートル。家屋の耐震補強や内部を改修し庭園もあしらえた総工費は約1億5700万円だ。宿泊できるのは1日1組で、宿泊者は歴代の住職が執務室として使う「御殿」も一晩貸し切ることができる。宿泊者が希望すれば、雅楽鑑賞や生け花といった日本ならではの体験も楽しめる。

料金は1泊100万円(税別)。
ターゲットは日本を訪れる海外の富裕層が対象となっている。1泊100万円の宿泊費のうち、約2割が文化財の修復等をおこなう保全の団体に寄付される仕組みだ。オープンから1年が経過し、仁和寺では文化体験のみの人数も含めると、9組48人が滞在・利用したという実績を作っている。

京都では、日本のインバウンドや富裕層客の追い風を前面から受けてきた。5つ星ホテル級の宿泊料を取っている中で課題となるのは、同等の5つ星ホテルのコンシェルジュやバトラーのような柔軟で高度な対応ができる人材の確保に他ならない。海外の皇室や企業経営者たちは、意外にも直接情報を収集し代理店等を通さずに日本を訪れる。そのため緊急時や夜中でも、セキュリティ面を含めてどのように対応してもらえるかというのが非常に重要になる。

今月28日には、富裕層旅行市場に特化した商談会「Japan Luxury Showcase」が行われるが、富裕層インバウンドを取り込むために富裕層の旅行客の満足度を高める課題を見つけ改善していかなければならない。京都だけではないが今までのノウハウを活かしながら、伝統を守りつつ新しい風を取り入れる試行錯誤が重要となっている。

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