外国人視点で見る日本の富裕層向けホテルの課題

日本の富裕層向けホテルにはどんな課題があるのか。元外資系証券会社の有名アナリストで、『新・観光立国論』の著書もあるデービッド・アトキンソン氏の視点を参考に考えてみたい。

最も大きな問題は、日本のホテルが多様性に乏しいことだとアトキンソン氏は言う。具体的には、日本のホテルのほとんどが安いホテルだという点だ。ではなぜ多様性に乏しいのか。

1つは、日本に「いいものを安く」という考え方が根づいているせいで、富裕層向けのホテルを考えた際に多様な発想が生まれにくいことにある。2つ目は調査・分析能力の欠如だ。今は日本に来ている訪日外国人旅行客にただ対応しているだけというのが現状で、日本に来ていない訪日外国人富裕層旅行客がなぜ来ていないのか、富裕層旅行市場の規模や将来性がどうかといった調査・分析ができていないという。

当社も同意見だ。ホテルに限らず、日本では富裕層ビジネスに参入するかどうかを検討する際、コストをかけないことが多く、当社にも情報を集めているがかけられる予算はないという問い合わせが少なくない。もちろんコストをかければいいというわけではないが、必要なことに対して適切なコストをかけることは重要だ。さらに言うと、オープンデータとして得られる情報が全くないわけではないのだが、実際にはそれにさえたどり着けていないケースもある。

結果として外国人富裕層からは「日本には泊まりたいと思えるホテルがない」と言われてしまうのである。同じアジア圏に位置するタイと比較してみると、タイには5つ星ホテルが111(Five Star Alliance、2018年7月18日現在)だが、日本には30しかない。では観光収入はどうかというと、タイのほうが多いという結果になっている。

5つ星ホテルの数がそこまで影響するのかと疑問に思う方もいるかもしれないが、5つ星ホテルの数と観光収入には密接な関係があると指摘する専門家もいる。そうでなくても、想像してみれば容易に納得できることだと思うが、1人数万円もする和食料理店に行くような客が、安いビジネスホテルに宿泊するはずがない。

では課題を解決するにはどうしたらいいのか。フェーズやターゲットなどによって異なるが、まずはオープンデータも含め富裕層ビジネスに関する情報を、時にコストをかけてきちんと集めることから始めることをおすすめしたい。

 

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